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K.M

四半世紀ほども前。
あの頃、僕らは毎日毎日サッカーボールを追いかけていた。

と、また昔話を始めてしまう中年ブログ。しかしながらラムの話からは少し離れて、今回はTAKANOHAに飾られている「絵」の話をちょっと。
 
そう、僕も彼も都内のサッカー強豪校に通い、全国大会を目指した。
Jリーグ創成期だった中学時代を踏まえて、この頃の高校サッカーはある種の異様な熱気があったように思う。中田英寿、中村俊輔といった後に日本を代表するプレーヤーが高校サッカーに現役で名を連ねていた。
僕らの高校では、入部希望者が120名を超え、初めて新入生がグランドに集まった時の光景は今でも覚えている。
個性豊かな仲間達の中、柔らかなボールタッチと絶妙なスルーパス、普段の性格とは相反するような激しいボディコンタクト、そんなプレーが彼の印象だった。
 
彼の作品に出会ったのは数年前、Facebookに投稿された個展の写真を観たのがきっかけ。色彩や雰囲気がTAKANOHAにとても合うなぁ、そう思いつつ、彼の絵は不思議とあの頃の彼のプレーを思い出させた。
「彼」というのは小林雅武(僕はマサと呼んでいる)。高校時代の友人だ。
 
彼の作品とプレーが重なるのは、それぞれに共通する空気感(独特な間というか)がそうさせるのかもしれない。彼と久しぶりに再会してそんな結論に至った。

「彼は僕よりも深く呼吸して生きてる」

日常の慌ただしさは、スピード感のようなモノサシで表されるが(《あっという間》のように)、やはり人それぞれが過ごす時間は物理的に変わらないと思う。そう、呼吸の違いこそ体感的な時間の違いなんだ。
彼の呼吸に合わせると、世界はより色鮮やかに、今日1日はより豊かになるような、
そんな気がした。

TAKANOHAのドアを出ると、東には六本木のビル群、西には渋谷のビル群がそびえ立ち、この10年の間に周りの風景は、息を飲む勢いで変化してきた。
けれど、何故か大都会の狭間、南青山7丁目というこの街は佇まいをさほど変えず、築40数年のヴィンテージマンションの1階にあるTAKANOHAにもゆっくりとした息づかいを感じる。

TAKANOHAに飾られた彼の作品を観ながら、「前からここにあったみたいだね。」そう言われる事がある。
彼の呼吸と、TAKANOHAの息づかいとサッカー。様々な事が織りなす今に、愉快になる瞬間だ。

久しぶりに、また一緒にボールを追いかけたいな。

写真は彼のアトリエ兼自宅で。
猫のももちゃんと、ダイニングの柱に貼られた奥さんの願い。

深い。